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市田喜一さんの話

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市田喜一さんは、自分が少しだけましなものが撮れるようになってきた頃お世話になった美術デザイナー...。
オールスタッフのあとにリールを見せてほしいと言われ、打合室で居心地の悪い二人きりの試写のあと、微笑んで「わかりました。」と言われたのは、初めての仕事の時。
グラフィック系のカメラマンの方が、いつまでもアングルを迷っているのを短気な自分がいらいらしていると、そっと自分の後ろに来て「そろそろ行ってくるかな。。。」と言ってカメラマンの人にふたことみこと告げると、瞬時にアングルを決めてくれたのは3度目の仕事の時。
事務所に出向いて、山のような仕事のポートフォリオを長い時間かけて一緒に見た。最後に仕事をした時は、その頃始めていた廃棄物の金属の鳥をスタジオの隅で作りながら、若いデザイナーとわたし達の様子をにこにこと伺っていた。

本質を見てくれて、大事にしてくれたとしか言いようがない。そしていつしか自分にも同世代のものを創る仲間ができ、その距離は少しづつ離れていった。

突然の訃報に伺ったお通夜で、たまたま横でお酌してくださった方は業界の人ではなく、版画の仲間で北村さんと言った。わたしは仕事の時の記憶、北村さんはずっと鬼をテーマにしていた市田さんが今年突然蝶を描いていて驚いたこと、お互いに知らない市田さんの話ををしながらたくさん飲んだ。

市田さんがあの頃のように泰然と微笑んで「見てくれている」という気がした。

1年ぶりに若いディレクターのワークショップをしている。
これが何かになるのだろうか、この子達の何かを変えるのだろうかと徒労に幾度も放り出したくなる。けれど遠い昔だけれど、今自分の心の中にあるもの、その温度を思うと、未来のことが少しだけ暖かく思える、会社に戻る冬の帰り道だった。

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