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山川竜司ラストTOKYO in 月光

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レスラーの息が聞こえるほど、しんとした会場は初めてだった。気がつくとレスラーがみなリングをとり囲み、それは儀式のように始まった。盟友といわれたレスラーは誰よりも遠慮なく彼の身体をせめたてた。それはここ最近の試合を見ていれば冷やりとするような激しさがあった。場外のマットのない花道に彼の身体が落とされ、ごつりとした音が響く。そこでようやく観客は儀式から放たれ耐え切れずレスラーの名を叫びだした。光る蛍光灯を打ち付けた月光蛍光灯ボードのひとつが破壊され、もう決して若くない二人の身体がみるみる血に染まってゆく。セコンドたちが壊れそうなほど激しくマットを叩く。みな知っているのだ。自分もいつか、こうやって終わる日が来ることを。ふたつめのボードがエプロンサイドに置かれると、エプロンの上で長い攻防が続いた。もうすぐ終わる。終わってしまう。それは彼だけでななく様々な人たちのある時間なのだろう。やがて永遠であってほしい時間が終わり、光る池の中に美しく沈んでいった。

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暗闇の中にわずかにまたたいた光の中で、レスラーの身体は幾度となく闘った友に再び大きく持ち上げられ、闇の中に幻のように消えていった。

 

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